※2025/4/12 長かったので記事を分割しました。
1. 医者が話を聞いてくれない
私はかれこれ10年ほど心療内科に通院しています。心療内科を受診している人にありがちな悩みの1つに、「医者が話を聞いてくれない」というのがあります。
大体の場合、「最近はお変わりないですか?」から始まって、「特にありません」と答えると「じゃあいつものお薬を出しておきますね」で診察終了。診察時間は長くても5分くらいで、これではたしかに「医者が話を聞いてくれない」とお悩みになるのも無理はありません。
2. 心療内科の医者はなぜ話を聞いてくれないのか
2.1. 時間がない
医者が話を聞いてくれないのには理由があります。1つは、単に時間が無いということです。心療内科の待合室をご覧ください。常に何人もの患者が、自分の診察の順番を待っています。おっと、前の患者の診察が終わらないうちに、次の患者が来院して……患者はこんなにたくさんいるのに、医者は1人だけ。どうやって診察を回しているのでしょうか。きっと何か秘密が……そうです、5分診療です。
最近は心療内科を受診するハードルが下がったおかげか、患者の数は激増しているようです。しかし街の心療内科の多くは医者1人で診察を回しているため、どこの病院もキャパオーバーになっていて、予約無しでは診察しない病院や、新規の患者はお断りの病院もあります。医者も朝からフル回転で患者を捌かないといけないので、1人あたりの診察時間はどうしても短くなってしまいます。
2.2. 話をする場所ではない
日本の心療内科では、主に薬物療法が行われています。薬物療法とはその名のとおり、向精神薬を直接頭に効かせて、精神疾患や精神障害を治療する方法です。心療内科医は、患者の症状を診て適切な薬を処方する、薬物療法のプロです。心療内科とは要するに「薬を処方する場所」であり、「お話をする場所」ではないのです。
(誤解の無いよう念のため申し添えておきますが、「心療内科医は薬を出すしか能が無い」みたいなことを言いたいわけではなく、適切な薬を処方することこそが薬物療法のプロである心療内科医の本義であり、薬の処方以外のことをあれこれ期待するのは患者側の誤解である、という意味です。)
2.3. 心療内科の医者は嫌いです!薬物療法以外の治療法は無いの?
薬物両方の他に、「お話をする」ことで精神疾患や精神障害を治療する、心理療法という方法があります。いわゆるカウンセリングなどです。
薬物療法と心理療法は、野球とサッカーくらい違います。医者は薬物療法のプロですが、心理療法のプロではありません。心理療法の分野には、臨床心理士・公認心理師というプロがいます。
ただ、どこの心療内科で心理療法を受けることができるわけではありません。というか、「臨床心理士・公認心理師がいる心療内科」はかなりレアです。まったく無いわけではないのですが、「無くはない」レベルなので、近所で探すのは困難というか、ほぼ無理です。
残念ながら、今日の日本では心理療法はそれほど普及しておらず、心理療法を受けられる施設は多くありません。また、心理療法では健康保険が使えないことが多いため、カウンセリングの受診料は高額になりがちです。
心理療法の専門家制度が確立しているわけではない点も大きな問題です。公認心理師は国家資格、臨床心理士も公的な資格ですが、これら以外にも心理療法っぽいことをやっている民間療法家がたくさんいます。サイコロジスト、セラピスト、メンタリストなどと自称する人々です。これらはすべて論外です。アテにするのはやめましょう。「心療内科医気に食わない」という気持ちは分からないでもないですが、一番頼りになるのは心療内科医です。
あと、精神疾患や精神障害を治療する上で、薬物療法を避けて通ることは心の底からおすすめできません。なぜなら、薬物療法は効くからです。よって、精神疾患や精神障害をケアするためには、心療内科がベストな選択肢というか、他にはめぼしい選択肢が無いのが実情です。
2.4. ドラマの心療内科医は患者の話をすごくよく聞いてたけど?
ドラマだからです。
3. 心療内科を受診する際に意識すべきこと
3.1. 時間を有効に使う
さて、心療内科を受診するにあたって、我々患者に与えられた時間はたったの5分です。5分という短い時間を、最大限有効に使わなければなりません。まず、とりとめの無い話をするのはNGです。あっという間に5分経ってしまいます。上司の悪口とか家族の愚痴とか、言いたいことがたくさんあるのは理解しますが、やめましょう。
また、上に「心療内科とは薬を処方する場所である」と書きました。つまり、薬に関すること以外の話をするのは時間の無駄です。不眠や抑うつ、躁状態や食欲不振などは、薬である程度は解決することができます。他方、恋愛の悩みとか職場のストレスとかは、薬では絶対に解決できません。薬で解決できそうなことについてだけ話しましょう。
3.2. 医者とコミュニケーションを取る
繰り返しになりますが、心療内科医は薬物療法のプロです。薬物療法の目的とは、患者の状態や症状に合わせて適切な薬を処方して、症状を治療したり緩和したりすることです。医者は完全にこの目線ですから、患者もこの目線に立たないと話が通じません。
よって患者がやるべきことは、自分の状態や症状について具体的に医者に伝えることです。悩み、苦しみ、恨み、辛み、言いたいことは様々あるでしょうが、なんにせよ医者に伝わらなければ意味がありませんし、医者に伝わるように話をしなければなりません。
「医者は冷たい!私の気持ちを理解してくれない!」とお怒りの方もいらっしゃることでしょう。一患者として、お気持ちは非常によく理解します。しかし、八百屋に来て「エルメスのバッグはどこ?なんで売ってないの?」と怒り出すアホはいませんよね? 心療内科には心療内科のルールやプロトコルがあるわけですから、大人しくそれに従いましょう。
私たち精神病患者が効率よく心療内科の治療をするために、何をすればいいのか。次の記事ではもっと具体的に、心療内科を受診する際のコツについて紹介していきます。

心療内科との付き合い方 その2(心療内科を受診するコツ)
心療内科を受診する際に注意したほうがいいポイントや、受診の前に準備しておくとよいことについて紹介しています。